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京都地方裁判所 昭和54年(ワ)1767号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

(一) 原告(昭和四七年八月一四日生当時六歳の女児)は昭和五四年二月二七日午後二時三〇分頃京都市右京区太秦垂箕山町八番地の八所在の被告方庭先内玄関前において本件犬に突然咬みつかれ顔面の右顔下部により頬部にかけて多発咬傷の傷害を受けた。

(二) 本件犬の体長は約八〇センチメートルであり前足を上げて伸び上ると大人の肩に達する大きさであつて人の身体に危害を加える能力を有し、かつ自分より小さな物には襲いかかる性質を有していた。被告は本件犬に首輪をつけロープの長さを一メートルにして表道路に接する門から奥へ約四メートル離れた玄関前テラスの柱にくくり付けていた。

(三) 原告は本件事故のときまで被告と面識はなく被告宅を訪れたこともなかつたが、好奇心から門扉を開けて被告方屋敷内に入り本件犬に近づいた。被告は本件事故当時被告宅の庭先において犬の繋いである場所を背にして植木の手入れをしていたが被告と犬との間は約三〇センチメートルの近距離であつて原告が犬に近付いているのを察知していた。原告が犬に接近していつた際犬も興奮してロープの長さの限度で原告に接近しようとした。原告はこのような状況の下で犬より遠ざかろうとせずにむしろ両手を差し出してこれを遮ぎろうとする態度を示したので犬は益々興奮し唸声をあげて原告の右頬部に一回噛み付いた。

以上の事実が認められ<る。>

二 被告には本件犬の性質に従い相当の注意をもつて飼育占有する注意義務があるというべきところ、右事実によると、被告は本件犬を表道路から約四メートル奥まつたところに約一メートルの長さのロープで繋いでいたとはいえ本件事故に至る前に幼児である原告が被告宅庭先に入つてきているのを知つていながら注意をすることなく放置していたものと認めることができるのであつて本件事故の発生について過失があるというべきである。

従つて、被告は本件犬の占有者として原告に加えた損害を賠償すべき責任がある。

もつとも前記事実によると、原告は本件事故当時六歳で事理弁識能力を有しており、他人の屋敷内にはみだりに立ち入るべきでないこと、また本件犬のような大きな犬は身体に争害を加える危険性のあることは分つていたものと認められるところ、犬に興味をもつたとはいえ面識もない被告方庭先に入り込み一人で本件犬に近づき、また犬が興奮状態にあつたから引き下つて危険を回避すべきであつたのに遠ざかることなく遮ぎるように両手を差し出して犬を一層興奮させた結果被害を受けるに至つたのであるから、原告にも損害発生について重大な過失があるものというべきであり、以上の情況を勘案すると原告の請求しうべき損害額についてその六割を減ずるのが相当である。

(吉田秀文)

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